我が子が脱ぎ捨てた、まるまって裏返しになっている靴下を見つけると、匂いを嗅ぐのを抑えられないのです。
なんかこう、絶対臭いってわかっているんだけど、我が子のだからなのか、その臭さも「くさい」じゃなくて「かわいい」に変わってしまう。
くさいがかわいいに変わるって、妙な話なんですが。
友人たちの姿を見ていても、結構な割合で、子どもの汗の匂いなんかを嗅いでは「クサイクサイ」って喜んでいる気がする。
これは本能的なものなんでしょうか。
たとえば赤ちゃんはいい例ですよね。
うんちやおならが出て喜ばれるのって、赤ちゃんの特権だ。
「わぁ、出たね」「すごーい!出た出た」
本来は嫌厭されるものを、あえて身を乗り出して見ようとする大人たちの顔を何度も見てきた。
みんな嬉々としている。
妙だ。
妙だけど、そこに人間のおかしみと美しさを感じてしまう。
我が家の子どもたちは赤ちゃんに比べたらだいぶ大きいけれど、多分同じ類の話ではなかろうか。
「今日もたくさん汗をかいたから、こんなに臭いんだね」
ここまでハッキリと言葉にはしないけれど、こういう感じのことを毎回思っている。
その根底にあるのはきっと、「生きてる」という実感なんだと思う。
あぁ、今日もこの子たちは「生きてるゾ、よしよし」という実感からくる喜び。
その喜びを感じるから私は、まるまった臭そうな靴下に、甘美な魅力を感じてしまうんです。