手紙をしたためたくなる時

 

娘が病室で書いてくれた手紙が泣けた。

 

「いままれありがと」

 

やっぱり弱気になったんだな、と思った。

いつも書いてくれる手紙は「いつもありがと」だったのに。

いつもが、いままれ(今まで)に変わっていた。

 

 

病院という場所は、ちょっと弱気になってしまう場所でもある(基本的には励ましてくれる場所だと思う)。

 

病院に長期間いると、時間の流れが変わっていく。

一日が、とにかく長く感じる。

寝ても寝ても眠いし、眠れないときはとことん眠れない。

まるで夢のなかにいるような、現実と虚構の境目が曖昧になっていく。

 

そして、こんなにも侵入的な場所はないと思う。

自分でも見たことのない、肉体の隅々までが露わになる場所。

 

レントゲンに写し出されたソレを見たら、どうしても「え?これ私のですか?」と聞きたくなるし、聞いて「そうだ」と当たり前のように言われても、「はーはーそうですか」と簡単にはならない。

普段目にしていないものを急に見せられても、実感がわかないのだ。

 

普段目にしていないものを見る場所だから、非現実感がつきまとうのだろうか。

 

 

そんな非現実のなかにも現実はある。夢のなかにも現実があるように。

 

今いるのは病院のベッドで、そこに寝ているのは私で、外に出たくても出られない。

あぁ、外を歩いていたのが懐かしいな。

 

そのことにハッと気づく瞬間があって(窓の外を見ているときなんて特に)、そうするとたちまち手紙をしたためたくなる。